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水都大阪2009参加作品をめぐって

河口龍夫

 
  人は地球上に誕生して以来水がなければ生きてゆけなかったため、「水と人」の関係は不可欠で親密でもあった。大阪の人々にとっても同様で、現在も変わることはない。そのような関係を「芸術と水」に置き換え、大阪において水を芸術へと接近させようと試みた。

日本銀行大阪支店出品作品
「水に杖をつく時」によせて


直径3m、高さ90cmの水槽に大阪の水を満々と張りつめ、あたかも厚めの水の硬貨が横たわっているように置かれている。その水の中心に先端を水に付けた銅の杖が、水に杖をつくように設えられている。重い銅の杖を水につくことはナンセンスで日常的にはありえないことである。注がれた器と同じ形態になった水が銅の杖と関係した光景が見られる。杖は人がつくことを忘れてはならない。しかし、杖つく人はどこにも見えない。

芝川ビル出品作品
「水の北斗七星」、「横たわる杖」、「消えた川」、「太陽の点」によせて


大阪の古いビルの最上階の屋内に、日中「水の北斗七星」が出現する。七つの水の星には鉛で封印された蓮の種子が銅の皿に乗せられて浮遊し、そのうちのひとつの水の星には「水の北斗七星」の空間が入れ子になって浮かんでいる。水中で「横たわる杖」を老いや死の隠喩と感じるならば、その上に浮く蓮の種子は誕生への隠喩と感じなければならないだろう。人だけが死ぬのではない。川も死ぬのである。もうなくなってしまった「消えた川」を再現し、その再現された小さな川にあなたが水を流し再生させてみよう。そして、屋上では太陽の光と熱で、水で育った木の板に焦げた痕跡をつけてみよう。その時、あなたが太陽熱を集光させてできた痕跡はあなたの生の痕跡である。


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